年収100万円以下のパートがどういう人か分かっていて書かない人たち

年収200万円以下が74% NHKニュースを読んで思ったこと。

この調査は、パートや契約社員など期間を定めて働く非正規労働者の労働条件を調べようと、厚生労働省がことし7月に5400人余りを対象に行ったものです。それによりますと、年収100万円以下の人が41%に上ったほか、100万円から200万円までの人が33%となっており、合わせると非正規労働者の4人に3人に当たる74%の人が年収200万円以下の厳しい条件で働いていることが分かりました。

では、年収100万円以下の人というのがどういう人かということを、国税庁の資料で見てみましょう。2010年、昨年のデータです。資料の22枚目、18ページと銘打たれているところを見てください。年収100万円以下の層ですが、男性715千人に対して、女性2896千人、人数比1:4。同じ資料の25枚目、21ページを見れば、年収100万円以下の層で最も従事者が多いのは、「宿泊業、飲食サービス業」、次いで、「卸売業、小売業」「サービス業」「不動産、リース業」が拮抗して、この4業種だけで過半。


ということは、統計が示す年収100万円以下の人たちの典型像は、女性の飲食店員、スーパーかレンタルショップのレジあたりです。要すれば、ファミレスかスーパーのパート主婦、あるいはアパートの管理人です。


よく知られていることですが、日本の所得税制の中には「配偶者控除」というものがあり、ある人の配偶者の所得が約100万円以下なら、その本人の所得が38万円マイナスカウントされます。また、社会保険はもう少し高いところにハードルがありますが、だいたい130万を超えると、国民年金の「3号被保険者」の資格を喪い、自分で国民年金の保険料を払わなければならなくなります。3号被保険者の人たちは、すなわち保険料を全く払っていないのに国民年金をもらえる特権階級の人たちです。これらの税制と社会保障制度のため、結果として、主に主婦の人が、自分のパート労働の勤務時間を調整して所得100万以下に抑えて、配偶者控除を得ながら国民年金保険料を納めずに年収100万を享受するということが横行しています。つまり、上記のNHKの記事でいう41%の年収100万円以下の人は、実はその8割くらいが、年収を調整している主婦である可能性が高いのです。すなわち、上記資料の3割以上は、貧困の問題ではなく、税制と社会保障制度の問題です。


言うまでもなく、NHKはこういう仕組みは熟知しています。にもかかわらず、本来はもっと稼げる主婦が時間を調整しているのと、本当に貧困で困っている人をごっちゃにした記事にしてしまうわけです。それは、発表側の厚生労働省の記者レクチャーが示唆した記事スタイルなのか、物事を大きくあおりたいNHKが主体的にごまかしたのかはわかりません。でも、厚生労働省がどうあれ、NHKは、本来、その仕組みを熟知しているのなら、この情報の提供主体である厚生労働省に対して、「あなた方が所管している国民年金の3号被保険者の制度のゆえに年収130万以下に所得を調整している主婦に関しどう考えますか?」と問いただし、そのことを記事にしなければ、この大本営発表的プレスリリースの本当の問題点には触れられないと思うのです。


勤労者の平均年収が400万くらいという現代において、その3分の1を稼いでいても年金の掛け金が要りませんなどという仕組みは、本来過剰なのだと思います。
年金の将来に向かっての安定性を確保することが強く求められている今の時代に、年金保険料を払わずに同額もらえる3号被保険者という制度の問題点を指摘できるデータを目の前にしながら、スルーして他の本当に困っている低賃金勤労者の問題と混同してしまっては、問題の所在をごまかしているだけではないかと思うのですがどうなんでしょうか。

(参照)
年収200万以下ってのが典型的にはどういう人か知らない人はまさかいないよね? - 常夏島日記